2015上半期 聴いたもの
昨年末に一年でよく聴いた音楽をまとめようと思った時に、選ぶ行為にものすごく時間がかかった。もちろん、そこまで膨大な量を聴いているわけでもないし、印象に残っている作品はすぐに頭に浮かんでは来るけれど、それでもライブラリを眺めながらああでもないこうでもないと考える時間が非常に多かったように思う。
それで今年からは、印象に強く残っている作品に関しては毎月まとめるようにして、普段音楽を聴く際によく利用しているiTunesにプレイリストを作っておいた。なので選ぶ作業はほとんど無かったといえる。でもこういうまとめをせっかく書くのであれば、その時の感想も書いておきたいという考えがあるので、この点においてなかなか行動に移せず今に至るというところ。
とりあえず以下に、2015年上半期によく聴いた、印象に強く残っている作品を挙げていく。計16作品。順位は無いけれど、感想が長いものほどより好みのものと言えるかもしれない。
Nic Hessler - Soft Connections
再生した瞬間に始まる心地良いイントロと、その後に耳に届くギターの瑞々しい音色に一発でやられてしまった。個人的に、ギターを弾きたくなる気持ちにさせられる音楽を無条件で好きになってしまう傾向があって、このアルバムもまさにそうした一枚だった。
Roman À Clef - Abandonware
A Sunny Day in Glasgow+元The Pains Of Being Pure At Heart現Ice Choirというメンバー構成で既に卑怯だ…なんて思わなくもないが、そんなの最高に決まってる。
肝心の曲の方は80年代、とりわけPrefab Sproutを意識したらしく、大人向けのインディーポップといった印象を受けた。それはきっと、年齢と経験を積み重ねてきたからこそ鳴らすことの出来る音楽なのだろうな、なんて思わせてくれる一枚だった。
WESTKUST - LAST FOREVER
twitterにて知ることの出来た一枚。疾走感強めのシューゲイズサウンド。アルバム全体も短めな構成で、繰り返して聴いてしまう一枚。個人的には後半の怒涛の畳み掛け具合が好みだった。過去作も併せて購入したけれど、そちらもかなり良かったので、今後の音源も楽しみ。
きのこ帝国 - 桜が咲く前に
きのこ帝国のメジャーデビューシングル。ちょうどこの作品を聴く直前に『フェイクワールドワンダーランド』を初めて聴いたこともあって、より印象に残っている。
タイトルにもなっている『桜が咲く前に』の破壊力は抜群で、思春期の頃にこの曲とこのバンドに出会いたかったなぁ、なんて妄想をしてしまうくらいには心に突き刺さった。節目節目(特に、タイトルにもあるように冬が終わりかけて春へと近付く雰囲気を感じられるころ)に聴きたい音源の一つ。
田渕ひさ子 - note wo tojite
田渕ひさ子さんのソロ作品。田淵ひさ子さんといえば、ジャズマスターを格好良く弾く姿を思い浮かべるけれど、今作においては等身大の女性らしさ、そしてギタリストというよりもボーカリスト/アーティストとしての魅力が詰まっている。シンプルな楽曲ゆえに、より映えるひさ子さんの歌声にはとても癒やされる。
ミツメ - めまい
ミツメは独自の世界をどんどん突き進んでいく。今作は昨年の名盤『ささやき』の延長上であるような印象がありつつも、音がよりシンプルになっていて鋭さを増している感じがある。何もいじっていない、ありのままのバンドサウンドを感じられる音源。とはいえ、「シンプルイズベスト」という一言では片付けられないような、計算され尽くした楽曲といった印象も受ける。これからも、いつまでも、ミツメに翻弄され続けていたい。
昆虫キッズ - さようならからこんにちは
昆虫キッズのラストライブを収録したもの。この作品については長々と書く必要はないだろう。とりあえず手にして、再生して、最後の『裸足の兵隊』が始まる前に高橋翔さんがさりげなく言う「昆虫キッズでした、またね」という一言まで辿り着ければそれだけでいい。
最高に格好良いバンドの最高に格好良い最期は、呆気無いほどに清々しい。そしてその清々しさに痺れてしまう。
viewtorino - viewpoint
Kensei Ogataさん、Nobuhisa Kuzukiさんによるユニットの新作。以前までの作品はギターに重点を置いて、いわゆるシューゲイザーやギターロックに分類されるような楽曲が多かったように思えるが、今作はブリットポップがテーマということで、今までよりも歌に重点を置いた楽曲が多い印象を受ける。特典音源も最高。
Kensei Ogataさんは上京する予定があるようなので、これからviewtorinoに限らず音楽活動の幅が広がるだろうし、ライブとかも頻繁に行ってもらえるととても嬉しい。普段なかなか見られない九州の格好良いバンドを呼んで、企画イベントなんて行ってもらえないだろうか…なんて、そんな妄想をしてしまっているくらいにはこれからの精力的な活動を期待してしまっている。
死んだ僕の彼女 - hades (the nine stages of change at the deceased remains)
結成10周年目にしてようやくリリースされた1stアルバム。10年という時間の長さを考えると、このアルバムがバンドにとってとても重要な一枚であることは容易に想像できるし、そんな作品が駄作なわけがない。
死んだ僕の彼女にはかなり思い入れがあって、ちょうどシューゲイザーと呼ばれる音楽に興味を持っていた頃に、『2songs+cassette tape e.p/6songs from the happy valley』というCDを偶然手にしたことがきっかけで、特に国内のシューゲイザーバンドに関心を持つようになった。その後色々な音楽をつまみ食いするような感じでここまで来たけれど、ここ最近再びシューゲイザーと呼ばれるような音楽を聴きたくなっていたタイミングで発売された1stアルバム、というのも何となく運命的なものを感じてしまったり…。
ジャケットの雰囲気が、world's end girlfriend『Hurtbreak Wonderland』を想起させるのも個人的にはグッと来たところだったりする。
東京スーパースターズ - 告白
こちらも活動歴の長い、東京スーパースターズの待望のアルバム。 仲野さんの歌声はどうして、こんなにも心に沁みるのか。
このバンド、というか特に、仲野哲史さんについて語りたいことはたくさんあるが、多分書ききれないしその前に力尽きてしまいそうな気がする。でも、この曲を聴けば全てが伝わる気がする。
東京スーパースターズ - "シマネ" MV - YouTube
仲野さんは自身にとってのロックスターのような存在で、そしてそれはこれからもきっと変わらない。
冷牟田敬 - noise myself
音楽を聴いたり新しい音源を購入することが、日常の中で重要な位置を占めてから随分と経つけれど、人生観を変えてしまうような作品に出会えた経験は、聴いてきた枚数に比べると遥かに少ない。音楽をよく聴くようになった初めの頃にはそうした作品と出会うことも多かったかもしれないが、今思い返してみても指で数えられる程度かもしれない。特に色々と聴いてきた今現在においては(もちろん、重度の音楽好きの方々と比較するとまだまだ足元にも及ばないことは自覚しているけれど)、知らず知らずの内に自身のハードルが上がっていて、音楽に心を動かされる瞬間が減ってきているような感じがある。それでもこのアルバムを初めて聴いた時に、このまま音楽に殺されてしまうのでは、なんて極端なことを思ってしまうくらいの衝撃があった。こうした感覚を抱いたのは本当に久しぶりだったので、このアルバムは自身の人生においても重要な一枚となったし、これからも大切に聴きたい一枚。
OGRE YOU ASSHOLE - workshop
OGRE YOU ASSHOLEの魅力は、作りこまれた楽曲とライブの生々しさにあると思う。とはいえ、まだ数回しかライブを見たことが無いので偉そうなことは言えないけれど、それでもOGRE YOU ASSHOLEのライブはとんでもなくすごい、ということはその数回の経験でもはっきりと分かった。
このライブアルバムはまさにライブを疑似体験できる一枚であるように感じる。特に曲間の繋ぎ方が自然すぎて、気付けばいつの間にか次の曲に移っていたりするあたりが。曲のエネルギーに圧倒されてじわじわとOGRE YOU ASSHOLEの創りだす世界に引きずり込まれていってしまう感覚が確かにあったし、一歩間違えると戻ってこれなくなりそうなちょっとした恐怖感もあったり。特に飲酒状態において聴くには非常に危険な一枚。
このアルバムを聴いて、ライブを見に行って、その余韻が抜けそうになった時にまたこのアルバムを聴いて、なんて楽しみ方が一番良さそうかもしれない。
悠木碧 - イシュメル
悠木碧さんは、可愛らしいキャラクターも大人っぽい落ち着いたキャラクターも難なく演じ分けられる、とても演技力の高い声優という印象があったが、そうした演技力の高さから来る豊かな表現力が、このアルバムにも反映されている。いわゆる声優の、キャラソンではなく本人名義の音源というのは今まであまり積極的に聴いて来なかったこともあってか、ただただその職人技に圧倒されてしまった一枚だった。
アニメがかなり良かったけれど、その良さはED→予告→提供の曲がどれも良かったのとその流れが完璧だったことがとても大きい。で、この一枚はその全てが収録されているということで購入したもの。特に予告で使用されていた『しあわせグラフィティ』という曲が好みだった。
原作を集めたいと思ってはいたものの結局まだ買えていないので、そのうち買いたいところ…。
Wallflower - Out To Sea
まだ上半期ではあるが、2015年のベストアートワークはこの作品だと既に決めている。コマツシンヤさんによる色鮮やかな素晴らしいイラストが夏へと誘う。
収録されている楽曲は今までにリリースされたものを集めたものではあるが、持っていないものもあったのでありがたい一本。何よりも入手できたことが心の底から嬉しい。
Wallflowerは現在アルバム制作中とのことで、NYC POPFESTに出演した勢いがそのまま作品へと昇華されていくのだろうと思うと、まだ何の情報も無い今から、既に期待が高まってしまう。
ART-SCHOOL -ART‐SCHOOL LIVE ~2015.02.13 at STUDIO COAST~
これだけはDVDなので、「聴いたもの」という趣旨とは外れるけれど、上半期で最も感動してしまった映像なので選んだ。ART-SCHOOLのことはきっと、なんだかんだ言っても、これからもずっと好きでいるのだろうなぁと確信させてくれたライブ映像。編集にもこだわりが感じられて、素晴らしいDVDだった。
これからのART-SCHOOLの活動についてはまだまだ何も分からないけれど、気長に待ちたいと思うし、再開の時を心待ちにしている。
以上が2015年上半期で印象に残っている作品。昨年同様、相変わらず国内のバンド・アーティストを好んで聴いていた。
これを書き始めた時が6月の終わり頃で、毎日少しずつ書き足していって今に至る。その間にApple Musicのサービスが始まったので試しに利用してみたら、どうやら自分にはかなり合っているみたいで、もう少し色々と使い勝手が良くなればこちらがメインになりそうな気配すらある。なので、これから確実に音楽の聴き方は今までとは変わってきそう。もちろん配信されていないバンドやアーティストの音源等は、今までと変わらず購入していくと思うけれど、気になるけどwishlistに溜め込んでいたような音源で配信されているものがあればそちらで聴こうかな、という流れになりそうな気がしている。というかここ数日は既にそうなっているので、とりあえず無料期間の三ヶ月間はかなりお世話になりそうだな、と思っている。
そういうこともあって、2015年の残りの半年は音楽との関わり方が今までとは異なってきそうな感じがある。今までもたくさん音源を購入したりしているわけではないけれど、それもよっぽど欲しいものに厳選していきそうな気もする。とか色々思ったところでこれからのことは全く分からないので、とりあえずは今まで通りマイペースで行くことを続けていきたい。
あとは、やっぱり毎月のまとめがあった分これを書くのも楽だったので、記録を残すのは結構大事だな、とか当たり前のことを改めて思ったりした。もうちょっとこの場を活用して、時にはちょっとした感想とかももっと書いたりしようかな、なんて今は思っている。