2020
気付けばあっという間に一年が過ぎた。いつものように年の瀬感がまるでないまま、新たな年を迎えようとしている。
今年はやはりコロナの記憶が多くを占めていて、マスクを忘れたことに気付いて取りに戻ったり、人と距離を取るのが当たり前になったり、手洗いが習慣になったり、なんて大多数の人が意識していることを自分も同じように実践するのが普通になった。
今までの多くのことが、危うい中でギリギリ保たれていたのだなということをまざまざと感じさせられた年だった。同時に、様々なところで醜い部分が見えることも多くて、沈んだ気持ちが一年通してずっとあったように思う。思い返してみても、なにか特別な思い出らしいものは普段よりもないような気がして、気付けば一年が終わってしまうような。そんな風に思えた一年の振り返りを。
まずは音楽のこと。
昨年の記事にて、サブスクリプションサービスはあまり向いてないかもなんて書いていたが、無料で試せるサービスを各社提供しているのを利用してみたら、思いの外良くて、それを利用するのが当たり前になった。なので購入した音源は今までよりもかなり少なく、レコードやカセットなどの限定物をとりあえず買っておく、みたいなことが多かった。
配信だと、気にはなるけど買うまでには至らない音楽を試聴感覚で聴いてみたり、普段好んで聴く以外のジャンルを冒険してみたり、なんてことが容易にできて、そうした手軽さは魅力的に思う反面、ちょっとずつつまみ食いをしてそれっきり、みたいな、記憶に残らない聴き方をしている気がするのはどうなんだろうか…とは思ったり。とはいえ新譜が出た時の深夜にすぐに聴けたりとか、やっぱり良い面も多いよなと。
と、すっかりサブスクリプションサービスが日常の中で当たり前のものになりながらも、今年一番印象に残っている音源は配信されておらずCDでリリースされたこちら。
前作も非常に心を鷲掴みにされたが、今作はそれ以上。聴いて自然と目頭が熱くなる瞬間に何度も襲われてしまう。アルバム全体に漂う、別れや死のイメージ、そこから先の希望に、どうしたって現状を重ねてしまう。
この曲とこの映像が自分にとっては2020年のベストトラック。
Climb The Mindの新譜からやや遅れてリリースされたDischarming manのアルバムも、互いに呼応するかのような内容で素晴らしく、この両アルバムはセットで聴かれるべきであると思う。「割れたグラスを元通りにする」という同じフレーズが出てきた時には痺れてしまった。どうやら以前スプリット7インチでリリースされていた両曲らしく、その頃から、それ以前から、共通した感覚を両者とも持っていたのかな、なんて。
なので、同時期のアルバムリリースも納得というか。この2枚を近いタイミングで聴くことができたのは、個人的にもすごく幸せな出来事だったように思う。
Discharming manが今回リリースしたレーベルとも関連して、2020年の初め頃にかなり強烈だったのはGEZANのアルバム。
踊れて泣けるレベルミュージックが存在するのか、と衝撃だった。本来レベルミュージックというものはそういうものなんだろうけど、新鮮に感じられたことを覚えている。
もうbandcampでの配信はやってないみたいだけれど、LOSTAGE『HARVEST』がデータ販売される時のワクワク感も結構印象に残っている。アナログは別にいいかなと思って注文しなかったのだけれど、今更になって少し後悔。
同じようにワクワクした気持ちで聴いたノーベンバーズのアルバムも、前作からの流れを感じさせつつアップデートした様に、これからもますます目が離せない存在だと改めて思わされた。進化を続けることに恐れがない佇まいは単純にかっこいいし、まず本人たちが楽しんでいるように見える雰囲気も、バンドの状態の良さを感じられて、次作ではどんな世界観を見せてくれるのか非常に楽しみ。
自分はそこまで強い思い入れがあるわけではないけれど、アルバムが出るとやっぱり気になってしまう銀杏BOYZの久々の新譜は、一つ一つの言葉が突き刺さりつつもポップな聴きやすさがあって中毒性があった。
たまたま教えてもらって聴いてみたyonigeのアルバムも自分が好きな要素が結構あって、過去作も含めて聴いていた。サブスクリプションサービスの恩恵を実感した作品。
そこまで多くの作品を聴いているわけではないが、エモ・パンク寄りの音楽では、
この2作が印象的だった。
最近リリースされた音源もかなり好みなものが多くて、
あとはたまたま見かけて名前が気になって聴いてみた、ゆくえしれずつれづれがめちゃくちゃ良かった。
アイドルのジャンルでいうとMaison book girlと、ヤなことそっとミュートは好きでよく聴いていたけれど、少し調べるだけでも面白そうなグループが多くて、今後もちょくちょく聴いてみようかなーとも。
国内の音楽はこんなところで、いつものように海外作品はあんまり聴いていなかったりするけれど気になったものを以下に。
Twitterなどでもあまり言及している人を見かけなかったので、あまり聴かれていないのかななんて思っていたこの作品。リリースされた当初はかなりリピートして聴いていたくらいハマったアルバムだった。一年通して、聴いている海外作品の数は少ないとはいえ、その中でも一番のお気に入りだったかな、と今振り返ると思う。
一時期作業用にローファイヒップホップやアンビエント等を聴いていたことがあり、その時出会ったLucy Goochの音源はジャケットの雰囲気も込みで惹かれた。
最近は積極的にシューゲイザーと呼ばれるような音楽を聴くことは減ってきたけれど、
この2作はシューゲイザーの最先端という感じがあって印象に残っている。特にNothingはこれぞシューゲイザーという音やフレーズを引用しながらも、焼き直しではなくて最新の形としてアウトプットされているあたりに思わず頬が緩んだことを覚えている。
他にはサブスクリプションサービスきっかけで、好きなジャンルではあるけれど深堀りはしていなくて、聴いたことがなかった名盤を色々探して聴いてみる中で、Texas Is The Reason(今調べたら消えているぽかったのでフィジカルを買いたい…)やThe Gloria Record、ハードコアパンクは昔好きだったけれど全然聴いていなかったFUGAZIなどを聴いたり。エモ寄りの音楽を好んで聴いていたなーという印象。このあたりのジャンルは国内のバンドは結構聴いていたけれど、海外のバンドはあまり知らなかったので、来年以降も少しずつ気になるものを見つけていこうかなと。
あとはClimb The Mind山内さんのインタビューでLimp Bizkitのアルバムについて言及していたのを見て、その音源やKORNなど周辺のバンドを少し聴いてみたり、なんてこともしていた。
音楽についてはこのような感じの一年だった。自由に使える時間の都合もあって、新しい音楽を探したり聴いたりということにのめり込むことはあまり出来なかったけれど、サブスクリプションサービスの利用によって、昨年よりかは日常の中で音楽を聴く楽しみを取り戻せたような気がする。とはいえ数年前と比べると熱が下がってきているのは自覚としてあるので、きっと今はそういう時期なんだろうな、とも思ったり。
ただそうした中でも音楽によって心が動く瞬間が何度もあったのは確かなので、来年以降もマイペースに、好みの音楽にたくさん出会えたらいいなと思う。
漫画のこと。
昨年と同じになってしまうのだけれど、2020年に読んだ漫画でベストを決めるならば、この一冊を選ぶ。
中盤からの流れとラストシーンのセリフと絵が完璧すぎて、読み終えたあとしばらくは呆然としてしまった。3巻で完結という短いボリュームではあるけれど、無駄が全く無いのも天才的。
新しく読み始めた作品でいうと、
あとは購入したはいいがかなりの冊数を積んでしまっていて、これから読むのが楽しみなものだと、
これらに加えて今まで集めているものの新刊や好きな漫画家の新刊なども手元にあり、しばらく退屈することはなさそうだが、読み切る時間がないのが問題…。新たに読み始めてみたい作品も既にいくつかあったりするので、楽しみが尽きないのはきっと良いことなんだろう。
基本的には紙の本や書店の雰囲気が好きだったりはするけれど、kindleが便利そうで以前から気になっているので、余裕があれば購入してみて、来年以降は電子書籍を活用していきたいという気持ちも。
アニメのこと。
2020年は、アニメを集中して見ることが出来ていた時期とそうでない時期の差が激しく、特にここ最近放送されているものに関しては全く見れていないけれど、今年見た作品の中で印象的だったものを挙げると、デカダンス、イエスタデイをうたって、映像研、かのかりの4作品は毎週楽しみにしていた記憶がある。個人的にはデカダンスがめちゃくちゃ面白くて、世界観とストーリー、映像、演技、魅力的なキャラクター、終わり方、どれをとっても自分の好みのど真ん中の作品だった。
Fire TV Stickを今年購入したので、来年は配信サービスもどんどん活用していきたいとは思うが、ただでさえここ最近はアニメのみならず映像作品を全く見れていないというのもあって、宝の持ち腐れになりそうな気配が既にあるので様子を見ながらという感じ。
と、2020年はこのような感じだった。どうしても年末に一気に一年のことを振り返るので、思い出すことは下半期のことばかりになってしまう。あらかじめ下準備をしていればもっと違う形になるのだろうけれど。とはいえ実際今年は、上半期の記憶があまりないというか、思い出らしきものが少なかったので、仕方ないのかもしれない。
私生活でいうと、昨年人生において一番の底なのではないかというくらい気持ちが沈む出来事がいくつかあり、それを引きずっていたのが上半期で、加えて世の中がどんどん悪い方向へじわじわと姿を変えていく様子も相まって、毎日お酒を飲んでは現実逃避に近いような行為を繰り返していた。
夏頃に昼夜逆転の生活を強いられることになったり、また、昨年から続いていた気持ちが沈む要因を打破する、現状が大きく変わる出来事もあったりして、下半期は毎日をこなすことで一杯一杯だった。自由な時間は全く無くなったが、余計なことを考える余裕もなくて、それはそれで良かったのかもしれない。そうした中でも幸福に思える瞬間が何度もあったりして、今思い返すと、かなり浮き沈みがあった一年だったなーと。
ただ来年以降も色々精神的に削られるに違いない事柄が既にあったりするので、また浮き沈みの激しい一年になるのではないかと、今から不安になったり。とはいえやはり、その時になってみなければ分からないし、人間はそう簡単には死なないということを今年は強く実感したので、なるようにしかきっとならないはず。
もうすっかりSNSを利用して何かを発信する、という行為から遠ざかってはいるが、上記の作品に触れた時はこの気持ちを発散したい!という欲求に駆られることが幾度かあったので、来年はもう少し自分のそうした感情に忠実になろうかな、なんて今は思っている。手始めに、使いやすいというのを目にしたnoteのアカウントを作ってみたので、それを活用してみたいなと。
世の中の様々なことやものが大きく変わった今年、自分が好きなもの、ある意味では生きがいというか生活の一部にもなっている上記の作品やそれ以外の作品も含めて、文化や芸術が蔑ろにされる様子に心を痛める瞬間が多々あった。実際それで失われてしまったことやものや場所や歴史があるのは日々目にしていて、けれどもまた復活するために奮闘する人たちがたくさんいることも目にしていて。自分に出来ることは数少ないと思うけれど、好きなものやこと、作品には誠実に向き合いたいなと思わされた一年だった。
来年は一体どんなふうになっているのか全く予想も出来ないけれど、今まで通り自分が好きなものやことをマイペースに見つけていって、また来年の今頃無事に一年のまとめを書けたら良いなと思う。